あおみかんのブログ

フリーランスのIT系エンジニア。ゲーム制作スタジオ4th cluster代表。

「どうぶつの森 ポケットキャンプ」の「なぜ」を肯定的に考えてみる

先日エントリを書いたら、想定よりもずっと沢山の人が読んでくれたので、引き続きこのタイトルについて考えてみようと思う。

aknep.hatenablog.com

改めて言及するけれど、初代「どうぶつの森」からGC版2作目「どうぶつの森e+」までが好きだった僕にとっては、受け入れがたいゲームシステムだったのは率直な感想だ。

ただ、ブコメでも言ってくれた人がいたように、(規模はともかく)ゲーム制作をしているのであれば、否定的に見るだけでなく「面白いと言っている人がいるのは何故か」についても検討するべきというのは、ご尤もな指摘だと思うし、そうしてみようと思った。

IGNからもポケ森についての記事が出ていたが、大人の書き方であったし、僕の書いた記事よりもずっと深い考察をしていて素晴らしいものだったので紹介したい。

jp.ign.com

今回の僕の記事も、先のIGNの記事と着眼点が被る部分が出てくる事は避けられない、なるべく僕独自の洞察も含めるので、お許し願いたい。

あらためて僕とこの記事の立ち位置

前回の記事では、最初の印象として「つまらない」と感じたので、その理由について分析してみた。

ただ、それは僕が「どうぶつの森」の大ファンであり、過剰な期待感と共にプレイした事も理由の一端だと思う。

その時の盛り上がりと言えばこんな感じ。

そういう訳で、否定的なエントリを書きつつも、引き続きプレイしてレベルも19になった僕が、今ならリリース当初の過剰な期待感も拭えた頃合いだし、個人的にゲームへの洞察を深めるため、務めて肯定する方向でこのゲームについて考えを深めてみたい。*1

典型的な「スマホゲー」UIとの融合

まず、僕は典型的にスマホゲーらしいUIが苦手だ。

中でもゲームUIというよりもスマホのアプリUIっぽいものは、ゲームの世界観や、プレイヤーキャラクターになりきるという観点での一種のナラティブを損なう傾向が強いと考えている。

パズドラが大ヒットして以降、iOSのTabBarを元にしたような下部のタブUIが普及したが、特にこれが大の苦手だ。

「ゆけ!勇者」( xHachiApps )みたいな、全編がスマホUIで、スマホUIから勇者を操るっていう概念が一貫しているタイトルならまだしも、そうじゃないタイトルでやられると凄くモヤモヤする。

でも、分かりやすいのは間違いない。ただでさえプレイ方法をユーザーに理解してもらうのが難しいタッチパネルにおいて、普及しているUIを採用したのは、むしろスマホでしかゲームをプレイした事がない若いユーザーへの歩み寄りだということも強く感じる。

前提が長くなったが、このUIに関しては結構大事な話がある。

それは、ポケ森のUIを開発した方は間違いなくこれらの話は正確に押さえていて、その上でなるべくプレイヤーとプレイヤーキャラクターとの一体感(≒ナラティブ)を損なわないように注意している。

タブの一番右のメニューを開いた時に、プレイヤーキャラクターがスマホを弄っているところがそこだ。これはすごい。プレイヤー本人がスマホを弄っている時、プレイヤーキャラクターもスマホを弄っている。

大半のゲームシステムでは、プレイヤーが操作している時にプレイヤーキャラクターが対応する行動をしているというような対応関係が綺麗に出来ている方が良いと思う。これと相性のすごく悪いであろうタブUIを上手くすり合わせたのは、偉業と言って良いと思う。

なぜ自由度を下げたのか

前回のエントリに書いたとおり、ポケ森は本編に比べて自由度をかなり下げている。これは間違いなく意図的なものだ。逢えるどうぶつがレベルに応じて解放されていく一連のゲームシステムはこれまでのどうぶつの森シリーズにはなかったもので、今作でわざわざ追加したものだからだ。

では、何故自由度を下げたのかというと、1つはスマホゲームユーザーへの歩み寄りだと思われる。これに加えて、スマホ向けのゲームは細切れの時間でプレイすることが多い。一回のプレイ時間平均は5分とかそんなものだと思う。こうなると、5分の間に何らかの楽しみが見い出せるようにしたい。必然的に、目標をシステム側から明示し、その目標を短時間に少しでも進められるような仕組みが欲しくなる。

実際プレイしていても、作業の合間のちょっとした休憩時間などに「何しようかな」と迷っているうちに休憩時間が終わってしまうのではなく「とりあえず虫を捕まえとくか」といった形で、小さな楽しさが実現されていると感じる。

なぜリワードを明確にしたのか

これは自由度の件とほとんど一緒になるが、細切れの時間でプレイした場合に、そのプレイの間に何も嬉しいことがないと、楽しめないと思う。

もしコンシューマ機のどうぶつの森シリーズのようなゲームシステムのままにしていたら、他のどうぶつの所に運ぶように依頼された物を受け取ったあたりで時間切れ。次に起動した時には何故そのアイテムを持っているのか、誰の所に運ぶんだったか忘れてしまう。よく覚えていたとしても、リワードによるカタルシスが得られるのは、宛先のどうぶつの所に持っていた時だけで、受け取った時にはカタルシスが得られない。

まとめると、短いゲーム時間でも多少のカタルシスを得られるように設計した結果が、あの明示的な目標とリワードだと思う。

なぜいくつかの要素をカットしたのか

これは単に開発リソースの問題や、そもそもどの程度ヒットするか分からないタイトルに投資できる金額には限りがあるとか、そういう理由でしかないと思う。

化石やハニワがない事や、キャンプ向けの家具を中心に作り直したりしなかった理由は、単にこれだと思う。

任天堂ほどの巨人でも、取れるリスクには限りがある。

なぜサーバーが1日程度で軽くなったのか

まじ凄い。ネタ半分で頭に「なぜ」ってつけてるけど、実際これは任天堂さんが少しは情報公開する気がするから、楽しみ。

特にDBをどうしてるのかは気になるけど、マリオランもGCPだったし、まぁBigTableなのかなぁ。などと邪推している。

何にせよ、特にWiiU以降、任天堂さんはインターネットやクラウドコンピューティングに詳しくなっている感じがして、技術への投資を怠らなかったことが、あの劇的な速度向上に繋がったのは間違いないと思う。

なぜキャンプにしたのか

これが結構難しくて、憶測でしかないんだけど、僕なりの検討が進んだ。

そもそも家具は家の中に置くものばかりになるのに、キャンプという状況設定にしたのは結構妙だ。わざわざ変えた理由があるように思う。

これは、先のナラティブの話だ。プレイヤーとキャラクターの操作と行動は一致していた方が良い。この延長で、キャラクターの喜怒哀楽はプレイヤーの喜怒哀楽と一致していた方が良いし、おかれた状況が一致していると何だか自分と画面の中のキャラクターが近い感じがすると思う。

僕の推測を言うと、スマホゲームは、外でやる場合が多い。これだ。

外を出歩いている(かもしれない)のに自分の村やその中の自分の家で家具を配置するのは変じゃないか。プレイヤーが外を出歩いているなら、プレイヤーキャラクターも外を出歩くべきじゃないか。という事なんじゃないか。

なぜ面白いのか

ここまで、特にポケ森で変更・追加された要素がなぜなのかについて僕なりに分析してきた。セルフカウンターエントリとして、あえて「なぜ面白いのか」について検討してみる。

より正確には、面白い部分はどこか、だ。

個人的には、やはりこのゲームのキモになるのはネットでSNSの友達と繋がることが出来る部分だと思う。

だからプレイヤーキャラクターを女装させたスクショがTwitterで回ると面白いし、バザー売り物をスクショで流して宣伝するのが楽しい。

特にバザーは非常に面白い要素だと思う。いっそもっとソーシャル優先にして、ユーザーによって手に入るアイテムが偏るようにしても良かったのかもしれないが、それはそれで一人で遊べないタイトルになってしまうから難しいかもしれない。

また、Miitomoでも非常に気をつけていたように思う部分だが、すこしでも他のユーザーを不愉快にしかねない要素がことごとく排除されているのもポイントだと思う。どうしても他のユーザーを不快にするような事はしてしまいがちだ。これはシステム的に排除した方が良い。

本編どうぶつの森では、どうぶつ同士のケンカもあったし、手紙に自由な事が書けたし、音楽を作れたり洋服を作れたりしたが、これらを(少なくとも最初は)排したのは、こういった不快な行動をさせないためだと思う。

ひとりよりふたり、ふたりよりよにん

どうぶつの森64版のキャッチコピーは「ひとりよりふたり、ふたりよりよにん、よにんより・・・たーくさん」というものだった。

そして「どうぶつの森」のジャンルは「コミュニケーション」だ。(任天堂の公式ページより ニンテンドウ64版『どうぶつの森』

e+ではSDカードを使ってスクリーンショットを共有できたりと、ネット上でのコミュニケーションを意識していた節がある。 ……まだまだSDカードも高価だったし、SNSも発達してなかったし、あまり見かけなかったけれど。

今回のポケ森の大ブームは、こういった初期シリーズからの悲願が叶った形とも言えると思う。

特に中心的スタッフの野上さんや江口さんのインタビューでは、当初からコミュニケーションを主眼にしていたようだ。

(参考: 『どうぶつの森e+』開発スタッフ インタビュー

僕は最初にプレイした時の印象で、どうぶつの森のコンセプトを「スローライフ」だと考えていたけれど、本来のコンセプトが「コミュニケーション」だったなら、今回のポケ森には納得行く部分も多い。

Switchで出すと思われる新作には、ポケ森の良さと旧シリーズの良さを上手に織り交ぜたものになって欲しいと、一方的な期待であるのは承知の上、発表もされていない今から待ち遠しい気持ちだ。

*1:矛盾だとか手のひら返しだとかと叩き始めるはてなーが出てくるに50000ベル